東京高等裁判所 昭和28年(う)488号 判決
被告人 石田豊
〔抄 録〕
第一点。
所論の要旨は、有価証券偽造行使詐欺被告事件の起訴状に、その偽造にかかる約束手形八通の写を添附したのは、刑事訴訟法第二百五十六条第六項の定むる規定に違反するをもつて、原審は同法第三百三十八条第四項によりこれが被告事件につき、公訴棄却の判決を為すべきであつたに拘わらず、そのことなくして、敢て不法に公訴を受理し、本案につき審判したものであるから、原判決は破棄さるべきであるというにあるが、記録についてこれを考察するのに、本件起訴状添附の約束手形と題する八葉の紙片は、被告人に対する有価証券(約束手形)僞造行使詐欺の罪の公訴事実につき、その訴因明示の一方法として該公訴にかかる事実の一内容が記載されているにすぎない。換言すれば、一般公訴事実におけると同様、犯罪要件該当の被疑事実について、裁判官の判断を得べき前提として、検察官が提供した単なる仮設的主張内容それ自体が記載されているにすぎないのであつて、起訴状に右八葉の紙片が添附されているからといつて、毫も裁判官に被告事件につき予断を生ぜしむべきものがあつたということはできない。論旨は採用し難く理由がない。